インフルエンサーマーケティング市場規模と投資判断

インフルエンサーマーケティング市場規模と投資判断

「インフルエンサーマーケティングの市場規模を、社内提案の根拠として整理したい」「市場が伸びていると聞くが、自社でも予算を増やすべきなのか分からない」。数字を調べても、施策の判断へどう結びつければよいか迷うことがあります。

市場規模は、企業による支出や活動の広がりを把握する資料です。一方で、市場の拡大は、個々の企業の売上や採算の改善をそのまま示すものではありません。推計した対象と時点、将来予測の扱いを分け、自社の顧客や体制に置き換えて考える必要があります。

この記事では、公開されている調査資料に示された市場規模、SNSマーケティングとの関係、縦型ショート動画の動向を整理します。そのうえで、施策の目的、費用対効果、制作体制、表示ルールへどう落とし込むかを解説します。結論は、市場データを投資の入口として使い、実施の判断は自社の仮説と検証計画から行うことです。数字の大きさを示すだけでなく、そこから何を確認するのかまで提案に含めましょう。

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インフルエンサーマーケティングの市場規模

調査が示す推計と予測を分けて読む

サイバー・バズとデジタルインファクトの調査では、2024年のインフルエンサーマーケティング市場規模を860億円、前年比116%と推計しています。また、2029年には1,645億円に達すると予測しています。過去の推計と将来予測は異なる性質の情報として読みます(サイバー・バズの発表)。

市場規模の推計は、調査の対象や方法に基づいて全体を捉えたものです。特定の企業や施策の成果を集めた評価とは分けて扱います。資料を提案に使う場合は、調査主体、対象年、発表された内容を併記しましょう。

将来予測は、今後の方向を検討する参考になりますが、予測された規模がそのまま実現すると扱わないことが大切です。予測値を根拠に売上目標を決める前に、自社の顧客と商品の条件を調べます。市場の方向と自社の可能性をつなぐための説明が必要です。

何を含む市場なのかを確認する

インフルエンサー施策には、投稿の依頼、企画、進行、測定など、さまざまな作業が関わります。市場データを読む際は、元資料がどの活動を対象にしているかを確認します。担当者が考えている施策の範囲と、調査の定義が同じとは限りません。

自社の予算に置き換えるときも、投稿への報酬だけを市場の全体と比べないようにします。制作や管理の作業を含むかどうかで、比較する意味が変わります。資料から読み取れない範囲は、推測で足さず、確認できた定義に沿って説明します。

市場規模から分かることと分からないこと

市場の広がりは、施策を事業計画で検討する理由のひとつになります。しかし、どの候補へ依頼すればよいか、どの商品に向くか、どのくらいの利益になるかは、市場の総額から決まりません。目的の違う情報を混ぜないようにしましょう。

社内では「市場として検討する価値がある」という説明と、「自社で実施する条件が整った」という説明を分けます。前者には調査資料を、後者には顧客との適合、計測、採算、実行体制の情報を使います。この区別があると、数字を示した後の議論を具体化できます。

SNSマーケティング市場との違いと関係

SNSマーケティングはより広い活動を含む

同じ調査では、2024年のSNSマーケティング市場を1兆2,038億円、前年比113%と推計し、2029年には2兆1,313億円に達すると予測しています。インフルエンサーマーケティングの市場と、SNSマーケティング全体の市場を区別して扱いましょう(サイバー・バズの発表)。

SNSマーケティングには、広告配信、公式アカウントの運用、インフルエンサーを活用する活動などが含まれます。自社が何に予算を使うかを考える際は、これらの役割を分ける必要があります。市場全体の拡大を、特定の施策だけの伸びとして説明しないようにします。

広告市場の資料は別の定義として読む

電通の「2025年 日本の広告費」では、インターネット広告費が総広告費に占める割合を50.2%、ソーシャル広告費を1兆3,067億円、前年比118.7%としています(2025年 日本の広告費、インターネット広告媒体費 詳細分析)。調査の年と対象範囲が異なるため、別資料の市場規模と単純に合算したり比率を作ったりしません。

ソーシャル広告とインフルエンサー施策は、SNSに関わるという共通点があっても同じ活動ではありません。投稿を広告へ二次利用することも考えられるため、自社の予算管理でも重複を避けます。投稿の制作と配信をどう区別して計上するかを決めましょう。

目的に応じて施策を組み合わせる

施策 主に考える役割 事前に整えること
公式アカウント 継続的な情報提供 更新と問い合わせ対応
SNS広告 目的に沿った配信と検証 素材・遷移先・計測
インフルエンサー施策 発信者の文脈で理解を作る 選定・表示・依頼条件

この整理は、どれかを優先すべきと決めるものではありません。顧客の検討の流れに合わせて、必要な役割を選ぶためのものです。複数の施策を使う場合は、同じ成果をそれぞれの実績として重ねて評価しないようにします。

縦型ショート動画を中心に動向を読む

成長の数字を形式選びの入口にする

同調査では、インフルエンサーマーケティングのうち縦型ショート動画の市場規模を246億円、前年比137%と推計しています。動画形式を検討する材料になりますが、自社の商品も動画にすれば成果が出るという意味ではありません(サイバー・バズの発表)。

TikTok、Instagramリール、YouTubeショートなどの形式を検討するときは、利用者の見方と商品の説明に必要な情報を考えます。見た目が合うかだけでなく、どの疑問を動画で解くかを先に決めます。静止画や詳しい文章が必要な場面まで、無理に短い動画へ詰め込まないようにしましょう。

動画の役割を投稿と購入導線で分ける

短い動画は、商品への興味や使う場面を示す入口として検討できます。一方で、利用条件や比較に必要な詳しい説明は、遷移先が担う場合があります。動画の最後に何をしてほしいかを決め、その先で必要な情報を用意しましょう。

インフルエンサーの得意な構成も確認します。説明が得意なのか、生活場面を見せるのが得意なのかによって、依頼する内容を変えます。形式だけをそろえるより、発信者が視聴者へどう伝えているかを見て企画を組み立てます。

二次利用を前提にするなら先に条件をそろえる

投稿した動画を広告や自社のページへ使う場合は、利用範囲の合意が必要です。媒体、期間、編集、音源、出演者の扱いを確認します。投稿を依頼したことだけを理由に、ほかの用途にも使えるとは判断しません。

広告利用で字幕や構成を変えると、元の投稿と意味が違ってしまうこともあります。編集後の確認方法も依頼時に相談しましょう。市場の伸びを踏まえて素材を増やす際も、利用条件と確認の負担を含めて計画します。

市場の動向を自社の投資判断へ変える手順

顧客と商品の適合を調べる

まず、自社の顧客がどんな情報を見て検討するかを整理します。使う場面を見たいのか、選び方を知りたいのか、条件を詳しく確認したいのかを考えます。インフルエンサーの発信が、その疑問へ答える役割を持てるかを検討します。

次に、自社の商品を正しく説明できる範囲をまとめます。発信者の体験や個性へ任せる部分と、商品情報として守る部分を分けます。伝える内容がまだ整理されていない場合は、候補者探しより先に資料とページを整えましょう。

予算の目的を言葉にする

認知を目的とするなら、誰に何を知ってもらうかを決めます。購入を目的とするなら、投稿から遷移先、購入までの経路を描きます。目的を広く置いたまま、後から都合のよい指標で成果を判断しないことが大切です。

予算には、報酬、企画、制作、進行、測定、二次利用など、必要な作業を含めます。金額の大小だけでなく、何が含まれているかをそろえて比較します。社内の確認や問い合わせ対応に必要な作業も、計画の一部として扱いましょう。

小さく検証して拡大条件を決める

最初の実施では、何を確かめるかを絞ります。候補と商品の相性、投稿の切り口、遷移先の説明など、仮説ごとに確認します。すべてを一度に変えると、次に残すべき要素が分かりにくくなります。

拡大する条件と、修正する条件を先に決めます。成果の量だけでなく、質、確認の負担、継続して制作できるかを合わせて評価しましょう。検証の結果、見送る判断になった場合も、合わなかった条件を残せば次の判断材料になります。

市場データからそのまま増額へ進むのではなく、自社の課題と検証を挟みます。図の流れに沿って整理すると、資料の紹介と施策の提案をつなげやすくなります。

市場の成長と自社の採算を分けて判断する
市場の成長と自社の採算を分けて判断する

費用対効果を説明するための計測と評価

投稿前に何を取得できるか確認する

再生、保存、リンクのクリックなど、どのデータをいつ共有してもらうかを依頼時に決めます。投稿後に必要な情報を求めても、取得できない場合があります。目的に必要なデータを先に整理し、取得できないものは評価の限界として残します。

遷移先には、どの投稿から来たかを区別できる計測の仕組みを用意します。リンクの設定だけで終わらず、ページの表示から申込まで動作を確認します。計測の準備がない状態では、効果が見えなかった理由と、実際に成果が少なかった理由を分けにくくなります。

認知と売上を別の指標で見る

認知の変化を見る場合でも、再生だけでは何を理解されたかまでは分かりません。投稿内容への反応や、関連する行動を合わせて確認します。売上に直結していないことを理由に、認知施策をすぐ否定するのではなく、最初に定めた目的へ戻ります。

購入を目指す場合は、クリック後のページ内の行動、購入、継続の状況を確認します。売上と利益は異なるため、採算には必要な費用を含めます。将来の購入見込みを、確認済みの利益として報告しないことも大切です。

実施前の想定と結果の差を記録する

採算の見積もりでは、届く人数、関心を持つ人、遷移先で行動する人というように、流れを分けて考えます。仮の条件には根拠と不確実性を記載します。分からない条件を楽観的に埋めて、実施の理由を作らないようにしましょう。

実施後は、どの段階で想定と違ったかを調べます。候補者の視聴者、投稿内容、ページ、商品の条件のどこを直すかを整理します。市場の成長という大きな説明から、自社で改善できる作業へ戻すことが重要です。

ステマ規制と運用体制で確認すること

広告であることの明示を企画の前提にする

企業が関わる投稿では、広告であることを明示する前提で進めます。#PRやタイアップ表記などを含め、視聴者へ関係が伝わる表示を確認します。ステマ規制について詳しくは、消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aをご確認ください。

PR表記をしたうえで、見た人の疑問に答える内容を作ることが企画の課題です。発信者の普段の言葉と、商品について正しく説明する内容を両立させます。表示の確認を最後の工程へ押し込まず、依頼条件として共有しましょう。

確認と修正の責任を決める

商品情報、表現、表示、利用条件を誰が確認するかを決めます。複数の担当者がいる場合も、各項目の確認者を明確にします。誰かが見ているだろうという状態を避け、完成版を承認した記録を残します。

公開後に修正が必要になった場合の窓口と、広告利用を止める判断の流れも整理します。施策の規模を広げるほど、例外対応が増える可能性があります。候補者の人数だけでなく、社内で進行できる量も考慮しましょう。

制作と対応の余力を拡大の条件に含める

予算を増やしても、原稿確認やページ更新が追いつかなければ施策は進みません。投稿前の確認、商品手配、データ回収、振り返りに必要な作業を見積もります。外部へ任せる部分と社内で残る判断を分けましょう。

問い合わせや購入が増えた場合の対応も準備します。反応を受け止められる状態かを確認してから、実施規模を決めます。施策単体の効率だけでなく、事業として継続できるかを見ることが必要です。

市場規模を使う提案でよくある失敗

違う対象の数字を同じ表へ並べる

SNSマーケティング、ソーシャル広告、インフルエンサーマーケティングは、調査対象が異なります。同じSNSに関する数字でも、母数を確認せず割合を作ることは避けます。資料に記載された対象と時点をそろえて説明しましょう。

社内資料では、出典のリンクを末尾にまとめるだけでなく、該当する数字の近くへ置きます。資料を部分的に共有した場合も、数値の根拠が離れないようにするためです。引用した内容と担当者の解釈も分けて記載します。

将来予測を実施の理由のすべてにする

将来の拡大予測は、準備を考える材料です。しかし、自社の商品に合う視聴者がいるか、説明できる素材があるか、測定できるかを省く理由にはなりません。予測から結論へ飛ばず、検証する仮説を間に置きます。

提案には、実施する場合だけでなく、保留する条件も記載します。計測が整わない、必要な利用許諾が取れないなどの条件があるなら、先に対応を決めます。予算の承認と、実施準備の完了を同じ判断にしないことが大切です。

動画が伸びていることだけで形式を決める

形式の選択は、視聴者が知りたい内容から考えます。短い動画で興味を作り、詳しい説明へつなぐ場合もあれば、文章や静止画を中心に説明したほうがよい場合もあります。市場の伸びは選択肢を見直すきっかけとして使いましょう。

検証では、形式と訴求を同時に変えたのかを記録します。違いが多い比較から、動画という形式だけの効果を断定しないようにします。次の施策で何を残すかまで考えられる記録を目指します。

よくある質問

Q. 市場規模が伸びていれば自社の予算も増やすべきですか?

市場の拡大だけでは判断できません。顧客との適合、採算、計測、実行体制を確認します。市場データは検討の入口として使い、自社の検証結果から配分を決めましょう。

Q. SNSマーケティング市場と同じ数字ですか?

対象が異なります。SNSマーケティングは、広告や公式アカウントの運用なども含む広い活動として整理します。各調査の定義を確認して使い分けてください。

Q. 将来予測は社内提案に使えますか?

予測であることを明示し、対象年と出典を添えれば検討材料になります。実現が決まった数字として扱わず、自社の成果予測とも分けて説明しましょう。

Q. 最初から縦型動画で実施すべきですか?

商品の説明と視聴者の疑問に合うかで判断します。発信者の得意な形式や、遷移先で補う情報も考えます。形式の人気だけで決めないことが大切です。

まとめ

  • 市場規模は、推計・将来予測・調査対象を分けて読む。
  • SNSマーケティングや広告費の数字を単純に合算しない。
  • 縦型動画の動向は、形式と制作体制を見直す材料にする。
  • 自社の投資判断は、目的、採算、計測、実行体制から行う。
  • 広告表示と利用条件を整え、検証結果から拡大を考える。

市場の大きさを紹介した後に、自社では何を確かめるのかまで言葉にしてみましょう。

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